樹脂流動解析とは
樹脂流動解析とは、一般的に、射出成形による金型内部の溶融樹脂の振る舞いをシミュレーションにより可視化することを指します。 金型内部での樹脂の流れ方、温度(せん断発熱、冷却)、圧力、体積変化(収縮)などを数値計算により結果出力します。 成形不良の原因分析や予測を行い、より良い製品形状や金型構造、成形条件の検討が可能になります。
樹脂流動解析の製品一覧
CAEソリューションズでは、樹脂流動解析ソフトウェアとして、Autodesk MoldflowとSOLIDWORKS Plasticsをサポートしています。導入を検討されている方に対しては、
お困りごとや解析で実施したい内容をお伺いして、最適な製品をご提案いたします。
Autodesk Moldflowは、製品設計者から生産技術者、成形技術者、研究者の方まで幅広く使える 樹脂流動解析ソフトウェアです。MoldflowにはAdviserとInsightの2つの製品があり、用途に合わせて導入できます。
Moldflow Adviser:製品設計者向けの樹脂流動解析ソフトウェアです。充填・保圧・反り・金型冷却解析を実施可能です。射出成形工程における樹脂の流れや状態を可視化し、成形品質の予測や分析が可能です。専門的な解析知識は必要とせず、金型、射出成形の知識があれば誰でも解析が始められます。
Moldflow Insight:ハイエンド樹脂流動解析ソフトウェアです。 ヒート&クール成形やガスインジェクション成形などの高度な成形法にも対応しており、充填・保圧・反り・金型冷却解析などを実施可能です。実成形条件をリアルに再現するための設定が用意されており、詳細な成形品質の予測や分析が可能です。
SOLIDWORKS Plasticsは、SOLIDWORKSアドインの設計者向け樹脂流動解析ソフトウェアです。製品設計や金型設計時に射出成形のシミュレーションを実施することで、成形不良を予測し、より良い設計に役立てることができます。操作性に定評のあるSOLIDWORKSで部品設計(CADモデリング)から成形性の評価(樹脂流動解析)まで包括的に実施できます。
樹脂流動解析の目的とメリット/デメリット
メリット
成形妥当性評価がデザイナー(上流工程)でも可能
成形品の品質向上(1st品)
↓
TRY回数の削減
↓
量産までのリードタイム短縮
↓
金型修正コスト削減
属人化の緩和(経験、勘、センスに頼らない)
デメリット
- ソフトウェア運用コストがかかる(場合によって解析専任者も必要になる)
- 金型、成形の知識が必要
- 操作習熟が必要
樹脂流動解析の手法と種類
樹脂流動解析は、熱可塑性樹脂の射出成形が主なターゲットですが、その他にも熱硬化性樹脂や様々な成形法をシミュレーション可能です。 熱可塑性樹脂の射出成形シミュレーションを行うための解析タイプには「充填解析」「保圧解析」「反り解析」「冷却解析」があります。
- 充填解析:樹脂が金型内にどのように流れるかをシミュレーションし、製品形状に起因する不具合を予測します。ショートショットやウェルドライン、エアトラップ、
ヒケ、繊維配向などが結果として確認できます。 - 保圧解析:充填後の保圧段階での樹脂の挙動を解析します。
- 反り解析:成形品が離型後に冷却される過程で生じる反り(どの部分にどの程度の収縮や変形、歪みが生じるか)を予測します。
- 冷却解析:成形サイクル内での金型の温度分布・温度変化をシミュレーションし、冷却管レイアウトの最適化に役立てるとともに、充填・保圧・反り解析の精度向上に寄与します。
熱可塑性樹脂、射出成形解析
冷却/充填/保圧/そり解析
ゲート位置解析
ランナーバランス解析
インサート成形解析/コアシフト解析
射出圧縮解析
MIM/PIM解析
二色成形解析
MuCell®(微細発砲)成形解析/化学発泡解析
コンフォーマル冷却解析/冷却管最適化解析
射出圧縮成形
射出圧縮成形は、通常の射出成形に圧縮工程を加えた成形方法です。
この方法は、特に薄物成形や高精度な転写が求められる製品に適しています。
金型全体を作動させる全体圧縮方式とエジェクターピンや入れ駒を作動させる部分圧縮方式があります。 いずれの方式も、通常の射出成形と異なり専用の射出成形機設備や金
型設計が必要です。
熱硬化性、圧縮成形/トランスファ成形
圧縮成形は、材料を加熱した金型に投入し、圧力を加えて成形するプロセスです。この方法は、特に熱硬化性樹脂やゴムの成形に適しています。
圧縮成形では、材料を金型キャビティに配置し、金型を閉じて圧力を加えることで、材料が金型内の空間に押し流され、硬化して最終的な形状になります。
製品形状部に直接材料を投入するため、比較的単純な金型構造で構成されます。
トランスファ成形は、主に熱硬化性樹脂の成形に使用されます。
このプロセスでは、材料を一度加熱して軟化させた後、狭い通り道(スプルー、ランナー、ゲート)を通して加熱された金型に押し込み硬化させます。
圧縮成形よりも寸法精度が高く、複雑な形状の成形が可能です。
また、一般的にスプルー、ランナー、ゲートを通過することでせん断発熱するため圧縮成形よりも硬化時間が短縮されます。
熱硬化性、反応射出成形
反応射出成形(RIM:Reaction Injection Molding)は、2種類以上の液体成分を混合し、化学反応を利用して成形します。 この方法は、特にポリウレタンやエポキシ、
液体シリコンゴムなどの熱硬化性樹脂の成形に適しています。
投入する材料の粘度が低いため複雑な形状や細かいディテールの成形が可能です。
また、硬化反応剤を同時に充填するため硬化が速く、生産効率に優れていますが、混合物は均質かつ正確な比率で管理する必要があります。
樹脂流動解析の流れ
樹脂流動解析を実施するためには、最初に、成形品の3Dモデルを解析ソフトにインポートします。実施する解析によっては、ランナーシステムや金型構造、冷却管レイアウトが必要になる場合もあります。次に、材料や成形条件を定義し、メッシュを生成します。解析を実行し、樹脂の流動状態や温度分布、圧力分布などを確認します。結果を評価し、製品設計や成形条件、金型構造の最適化に活用します。