VOFとEuler-Eulerとスロッシングの話
二相流解析には、主にVOF法(Volume of fluid method)とEuler-Euler(二流体モデル)が使用されます。 VOF法は界面捕獲法の一つで、計算格子の液体充填率(F値)で表された気液界面の変形と移動をF値の輸送計算によって求める手法です。界面を含む計算格子では気液等速と仮定し、表面張力を考慮することができます。界面をきちんと捕獲するためには計算格子を細かくする必要があります。そのため自由液面や大きな気泡のようなスケールの大きな界面か、小さい気泡や液滴を含む小規模な体系の計算に適しています。
一方、Euler-Eulerモデルは気相と液相それぞれの基礎方程式を解く手法です。すなわち同一格子で気相速度と液相速度の異なる様相を解析することができます。また、計算格子ごとに各相の体積割合をもっているので格子サイズより小さい気泡や液滴でも質量を保存して計算することができます。ただし界面勾配や表面張力計算の精度は十分ではないため、気液界面を厳密に計算することはできません(通常は体積割合0.5の格子を界面とみなします)。そのためVOF法で扱うには計算負荷がかかる大規模解析や沸騰や凝縮といった気液間の非平衡過程の解析に適しています。
ここでプールのスロッシング解析を考えてみます。スロッシングとは容器内の液体が外部から長周期の振動が加えられることにより振動する現象です。今回はプール(15m×10m、深さ3.5m)の水に地震波を加えた解析を実施しました。HELYX(OpenFOAM)ではVOFもEuler-Eulerも両方使用することができますが、今回は自由液面解析ということで標準的なVOFソルバー「interFoam」で実施しました。比較的大きな波形が予想できたので格子幅は水平方向0.2m、高さ方向0.05mと粗めの格子にしましたが、最大波高の位置や大まかな波高を見るには十分な結果が出たと考えられます。ただし、プールからの溢水量は正確に量れたか疑問が残ります。なぜならVOFでは格子サイズより小さい水滴は消えてしまう可能性があるため、今回のような水面が激しく揺れて水しぶきが飛ぶような解析では質量が保存できていない可能性があります。そのような場合はEuler-Eulerで解くことも考えられます。VOFより粗い格子でも質量が保存でき、計算負荷も軽減できます。このように確認したい現象によって使用するモデルを決めると良いでしょう。
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