安全に壊すモノづくりの話
「安全に壊す」という言葉を聞くと矛盾を感じる方も多いのではないでしょうか。
システムや構造物が部分的に故障、破損した際に、安全な状態を維持するための設計思想をフェールセーフと呼びます。構造物である以上「ものは壊れる」という前提で、安全を確保するための考え方となります。
現代のモノづくりにおいて、コンピューターによるシミュレーションは広く活用されており、実際に製品を試作する前の段階で強度、性能の評価に広く利用されています。
中でも有限要素法(FEM)による構造解析は有効な手法として利用されて、特に非線形解析は材料の複雑な挙動や幾何学的変形をするために不可欠です。
本コラムでは、FEM構造解析における非線形解析の意義とフェールセーフについて解説します。
FEM構造解析と非線形解析の意義
FEM構造解析は主に、複雑な形状や構造の応力、ひずみ、変形を数値的に解析する手法です。この手法は、構造物を小さな要素に分割し、それぞれの要素の挙動を計算することで全体の挙動を予測します。
材料が塑性しない、大きく変形することがない場合における設計検討は、線形解析によるシミュレーションで十分な場合も多いと考えられます。非線形解析は、線形解析では対応できない複雑な挙動を解析することができる手法で、以下のような非線形性を考慮します:
1.材料非線形: 材料が弾性限界を超えると、塑性変形や破壊が発生します。これを正確に解析するため
に、材料の非線形特性を考慮します。
2.幾何学的非線形: 大きな変形が発生する場合、構造物の形状変化が応力分布に影響を与えます。
3.境界非線形: 複数の部品が接触する際、その接触面の摩擦や滑りなどの特性を解析する必要があり
ます。
非線形解析とフェールセーフ
FEMを用いた非線形解析は、フェールセーフ設計においても大きな役割を果たします。以下にその具体的な応用例を紹介します:
1. 自動車産業
自動車の衝突安全性の向上には、衝突時の車両の変形挙動や材料の破壊特性をシミュレーションすることで、より安全な車両設計が可能となります。また、フェールセーフ機能を備えたブレーキシステムやエアバッグの設計にも非線形解析が活用されています。
2. 航空宇宙分野
航空機の設計においても、工具の落下などによる損傷が機体に生じた上で損傷の進行を解析で評価し飛行中の安全性を確認します。
3. 建築構造物
建築物の耐震設計では、地震時の大きな振動に対する建物の挙動をシミュレーションし、フェールセーフ設計を取り入れることで、倒壊リスクを最小限に抑えます。
実践的な手法
非線形解析とフェールセーフ設計を効果的に実践するためには、いくつかのステップがあります。まず、潜在的なリスクや故障モードを洗い出し、シミュレーションによってそれらを解析します。次に、詳細な構造解析を行い、弱点を特定します。最後に、解析結果をもとに設計を最適化し、必要な補強や改良を施します。
まとめ
構造物においてフェールセーフ設計を行う際、非線形構造解析は強力なツールとなりえると考えています。弊社では非線形構造解析に定評のあるソフトウェアAbaqusの販売、教育、サポートを行っており、ご導入検討中の方向けに無償の体験セミナーも開催しております。
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